映画、【八日目の蝉】の評判と分かれる意見

映画

『八日目の蝉』(2011年公開)は、角田光代の同名小説を原作とした映画で、井上真央と永作博美が主演を務めました。監督は成島出(なるしまいずる)で、育児誘拐という重いテーマを扱いながらも、母性や愛情の深さを描いた感動的な作品です。一見、子どもを誘拐して育てるよいう行為に違和感や嫌悪感を持つ人が殆どでしょう。実際に希和子役の永作博美からは、子どもに対しての罪悪感や、謝意にも近しい複雑な感情を表現していると、見終わったあとに感心するほどの演技を魅せてくれました。これほど複雑な感情表現を演出できるところが、邦画の魅力だと思います。

そして幼い頃に誘拐されて幼少期を記憶に持つ恵里奈役の井上真央さんの演技にも、また脱帽ですね。物語が進むに連れ、記憶を辿る旅の様な中で蘇る希和子の、貧しくも狂おしいほどの愛情を受けていたことを、誘拐された被害者感情との複雑な感情のぶつかり合いを、自身の心の中に同居させている、複雑な表現を見るものに、物語に深みを感じさせてくれます。

評判・感想好:評だった点

1. 圧倒的な演技力

永作博美(希和子役)の切なくも狂おしい母性の表現は、この役は永作さん以外には演じてほしくないと思わせるほど、母親の無償の愛とは・・と考えさせられるほどでしたね。

井上真央(成長した恵理菜役)の葛藤と心の成長は、否定しながら温もりを辿る矛盾した行動を止められない、もどかしさを見事に演じてくれています。本当に脱帽のストーリー展開に欠かせない役になっています。

小池栄子、森口瑤子、田中哲司らの脇を固める俳優陣の存在感は流石の一言ですね。脇役で光り過ぎない演技、本来ならその場にいるだけで、存在感を放つ方たちの演技が物語が自然と入ってくる、そんな役割を果たしてくれているのも、見ものですよ。

2. 感動的なストーリー

ただの犯罪映画ではなく、「母とは何か」「愛とは何か」を問いかける展開から目が離せなくなるはずです。自分なら許せるか?自分なら助けたくなるか?見て見ぬふりをするのか?という葛藤に視聴者にも投げかけてきて心を揺さぶり、えぐられる感情に困惑するでしょう。

誘拐された少女が成長し、自身の過去と向き合う姿に共感する人が多かったというのも納得がいきます。

3. 映像の美しさ

希和子と薫(幼少期の恵理菜)が逃亡する中での四季の風景が美しいですね、田舎での貧しくとも優しくいられる、暮らしと風景、人々の暖かさも田園地帯の緑豊かな温かみに深みが出るシチュエーションでしょう。昔の日本人が誰しも持っている田舎の懐かしさを感じさせてくれています。

瀬戸内の自然や旅の中での情景が、母子の絆を引き立てていますよね、現在のように携帯片手に人の目を見るって、あたり前のことが出来なくなってしまった日本人に、何故か心地よく突き刺さります。

4. 感情を揺さぶる音楽

渡辺俊幸による劇伴が、物語の切なさや温かさを見事に演出しています、静かで重いテーマなのに暖かさを表現できていることも、引き込まれる要素でしょうね。

賛否が分かれる点:希和子の行動に対する評価

【彼女の気持ちはわかるけど、やはり犯罪だ】という意見

【それでも彼女は薫を心から愛していた】と共感する声

私は後者の意見に近いですが、被害者からは許す感情などは絶対にありえないのも確かですが、この映画の描いてる視点から見ると、どうしても心揺さぶられてしまいます。

ラストの解釈

成長した恵理菜が母になることで、希和子の愛を理解するという結末に感動する人もいれば、割り切れない思いを抱く人もいるでしょう。賛否両論あっていいのでは無いでしょうか?それほど割り切れない重いテーマです。

魅力・見どころ

① 希和子と薫の逃亡生活

不倫の末、子どもを産むことができなかった希和子が、恋人の妻が産んだ赤ん坊を衝動的に誘拐。しかし、逃げながらも薫を愛情深く育てようとする姿が印象的。逃亡生活の中で、偽りながらも「母と娘」として過ごす時間がとても美しく、切ない。

② 成長した恵理菜の葛藤

井上真央が演じる成長後の恵理菜は、自身の過去を知りながらも、育ての親との間に生じる違和感に悩む。自分は本当に愛されていたのか? そして、誘拐した希和子の気持ちは何だったのか? 彼女が過去と向き合い、母になることで答えを見つけていく姿が胸を打つ。

③ 「母性」とは何かを問うテーマ

血のつながりがなくても、愛情を注いで育てた時間は「母性」と言えるのか? たとえ誘拐という罪を犯していても、愛情を注ぐことに罪はあるのか? さまざまな視点で「母と子の関係」を考えさせられる作品。

『八日目の蝉』は、単なる誘拐事件を描いた映画ではなく、愛と罪、母性と運命について深く考えさせられる感動作です。演技、映像、音楽、脚本のすべてが高水準で、多くの人の心を揺さぶりました。ラストシーンは賛否あるものの、「本当の母とは誰なのか?」というテーマに対し、観る人それぞれの答えがある作品になっていますね。是非一度ご覧になってもらえればと思う作品です。最後まで見て頂きありがとうございます。

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